マツタケ様を頂きました。くれた人はいい人です。とてもいい人です。ご覧ください。二つに切ったマツタケを焼いたのですが、幹には、まったく傷もなく、ただただ真っ白な透き通る極上のきれいさだったのです。収穫したところは、沿岸に限りなく近い三陸北部です。山田、岩泉、普代、久慈と岩手沿岸は品質のすこぶる良いマツタケの産地であることは、県内よりも県外に多く知られています。一説では日本最高峰とも言われています。では、見た目だけかという声も聞こえそうなので、味の実況中継をいたします。
まず、1本目は、高級なカツオだしを事前に濃いめに取りまして、そこへ遠慮なく大きめに裂いたマツタケ様をゴロゴロと入れます。弱火で土瓶の中で沸騰直前まで沸かし、取り出した図が左上です。恐る恐る、おちょこに注ぎ、神に感謝しながら一口、ごくっ。天女が舞い降りた瞬間、喉元と胃袋が感動のあまり震えてしまいました。ちびりちびり…ごく。この繰り返し。幸せとは、気持ちじゃなく「味」だったと言い聞かせたほどです。
次に、2本目の大きめのマツタケ様を二つに裂きます。これをレンジに銀紙を敷いて強火であぶりました。やや汗がかいてきたころ、マツタケにうっすらと湿り気が出たころを見計らい、スダチをさーっとかけてガブ。鼻腔にくぐり抜ける香りは、マリリン・モンローの有名な香水なんて幕下もいいところ(すみません、若い人には分からないシーンですね)。とにかく金メダル、素晴らしい香りなのです。香りマツタケ味シメジ、という例えがありますが、明らかに間違いです。三陸産マツタケの味は、実に優雅で気品にあふれ、私の舌も「もうなんも言えねえ」と感動しすぎてヨダレまみれになっていました。
大震災から3年半。少しずつ自然の恵みも戻ってきています。少しずつでも、故郷の香りが戻り始めてきています。
2014.10.3 盛岡タイムス掲載