「はい、はい、はい。手をいったん上げてから、はい、右、左」と、やや女性がかった踊りの師匠がステージで指導しています。「はい、そこでゆっくり回って、はい、前を向いてイチ、ニイ、イチ、ニイ」と先生の声が弾んできました。
商店街や三陸鉄道の社員たちが参加して手踊りの練習です。2、3回、先生の指導が進むと、上手な人は大半を覚えますが、男性はなかなかタイミングが合いません。この微妙なズレも、手踊りには欠かせません。合わないから面白いんですね。全員がAKB48のようにそろったら盆踊りや手踊りは、つまらないですね。軽快で日本の夏らしい音楽が宮古駅前に鳴り響きます。
踊りを指導している先生は、前川さんと言います。男性ですが、言葉遣いはすっかり女性です。写真の中央にいるスタイルの良い女性は三陸鉄道の旅客サービス係の大橋さんです。その前のぎこちない動きをしているのが、三陸鉄道総務部の皆川君です。顔の表情に変化があまり見られない皆川君に、「楽しい?」と聞くと、笑顔のない、いつもの顔つきで「はい」と答えます。結構、重労働の荷物運びの時も同じ顔つきです。つらい時も楽しい時も一緒の顔、皆川君は独身なのです。「しょっぺえんだがあめえんだがわがんね」と言った「天野アキ」こと「あまちゃん」のせりふを思い出しました。
そんなことで、街の人たちと一緒に手踊りの練習。とても駅前がにぎやかになります。恥ずかしそうに最初は踊っていたお母さんたちの腰つきも、だんだん妖艶になってきます。すでに陶酔の世界に入り、先生の手拍子にリズムを合わせて踊り続ける踊り手さん。思わず拍手をしてしまいました。
元気な三鉄、元気な宮古市民。もうすぐお盆ですね。8月11日は、震災から4回目のお盆です。犠牲になった天国の皆さんも、きっと笑顔で手拍子を送っていますね。元気な復興の街づくり。三鉄も一緒に、いつまでも踊り続けます。
2014.8.8 盛岡タイムス掲載