月別アーカイブ: 2015年2月

三鉄ぽっぽ屋「熱すぎる男たちシリーズ」久慈のナイスガイ 夕向 幸成 45歳

20150213

左側ではない。右側の笑顔でポーズをとっているのが夕向(ゆうむかい)である。爽やか系NO1の美男子のため、若干同僚のひがみを買う。左側で腕を組んで監督ポーズをとっているのは二橋であり、監督とはまったく無縁なので省く。ただ立っているだけだ。二橋もひがんだ顔をしている。

細かいことは全く気にしない。格好良ければすべては明るくなれる。ずいぶん前に久慈駅でお釣りを間違えて1万円損したが、将来に役に立つ勉強代だと前向きに解釈する。「ずぶんの長所は、大雑把で明るいところっす。短所は、細かいことは気にしないことです。O型ですから」とこの笑顔だ。本部長の金野は「細かいこと気にしないじゃなくて、冷静に一つ一つ物事を判断しなさい。」と指導するが、「そうっすね」と明るく応える。「震災で沈んだ心をずぶんの元気で盛り上げていくんだ」とLED顔負けの明るさなのだ。多少の失敗や、早とちりや、細かな間違いなど、「気にしていたら元気が消える」と前向きだ。全国的話題を発信している「三鉄キットドリームス」のコーチと選手を兼任している。中学時代は野球部のキャプテンだった。全国大会を目指して頑張った。行けなくても「頑張った」ことが素晴らしいのだと明るく振り返る。

仕事は運転士だったが今は「指令」だ。冷静沈着な行動、判断が不可欠なセクションだ。「安全、安心な運行をしなければならない。自分に合った、男として最高の仕事場」と誇りをもつ。「三鉄の中堅社員として、何よりも社内の雰囲気を盛り上げることが大事で、一致団結して三鉄の将来を強固にしなければならない」とたまにはまともなことを話す。

 

元若大将、盛岡で被災地応援

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若い時は「若大将」でした。盛岡の大通り中央付近の路地にある「寿司わか葉」の主人・千葉勝司さんと愛娘の希(のぞみ)さんです。実家は気仙沼にあります。毎週気仙沼に戻り、ネタを仕入れてきます。船乗りや魚屋に友人が多く、自身も魚大好き人間で、とうとう寿司(すし)屋になってしまいました。

気仙沼特産の「フカヒレ」や「もうかのほし」「ハーモニカ」「マカジキ」など珍しいネタが常時そろっています。震災でガタガタになった郷土が徐々に戻っていく姿に喜びをかみしめながら、自慢の食材をお客さんに勧めます。寿司へのこだわりは厳しく、手を抜くことは許しません。奥に写っている弟子は、手を抜いているのではなく、休めているだけです。いかにも昔風の怖い親方か、というと実は愛嬌(あいきょう)たっぷりなのですが、威厳を保つため、若干格好を気にします。ぼそぼそと話す口調が客席を和ませます。愛娘には厳しく「早くしろ、まごまごするな」と威圧します。顔はニヤケながら。

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この親方の特徴というか、技は「盛り付けのセンス」です。日本調の顔からは想像できないほど、フランス的というか洋風というか、トッピングの野菜たちを彩り美しく芸術的に盛り付けます。もはやメーンの魚介類が主役ではなく、脇役たちが主役になっているようです。「親方、顔に似合わず、きれいに仕上げるね」と褒めると、「…」と黙ります。照れているのか怒っているのか不明です。愛娘の希さんは、日本酒とワインに精通しています。というか自分が好きなので、気にいった酒をそろえるのが趣味のような感じもします。きっと飲兵衛です。

気仙沼自慢の寿司ネタ、魚介類をよりおいしく、楽しく出していきたい、それが郷土の応援と、きょうも頑張っています。昼はちなみに1000円で豪華なランチセットになっています。

2015.2.6盛岡タイムス掲載

三鉄ぽっぽ屋「花形運転士シリーズ」 人生最大の仕打ちを受けた不遇の指令 指令主任 千葉 敬 46歳

20150205

これ以上の仕打ちはなかった。今でも夜中に目が覚める。夢も見る。あの日、一昨年の「能年玲奈」ちゃんが、NHKの番組「突撃あっとほーむ」でサプライズ出演。大船渡盛駅にやってきた時だ。南リアス線運行部吉田部長が言った。「おまえは指令だから留守番な」・・・碁石海岸から真っ逆さまに落とされた焦燥感が襲った。みんなが玲奈ちゃんと踊っているとき、指令室で泣いていた。誰よりも玲奈ちゃん命と頑張ってきた。「ひどい」と呟いた。イベントが終わり、「玲奈ちゃん最高!」「お、おれ握手した!」と大はしゃぎする仲間の嬌声を聞いて泣いた。男らしく生きようと決心した。そうした気持ちは一切出さず業務に励んだ。以前より毅然として働いた。

 吉田が後ろめたさを感じていた。その後、AKB48「恋チュン」Yutube動画の出演オファーが三鉄にあった。吉田はすかさず千葉を出演させた。次の依頼も来た。どちらもAKB48だ。吉田は優先的に千葉を出演させた。「まゆゆ」と車内でのツーショットも実現させた。ようやく千葉の機嫌が直り、吉田は安堵した。今では千葉家の家宝として、「まゆゆ」とのツーショット写真が家に飾られている。家宝らしい。切り替えも案外簡単な運転士なのだ。

 業務は指令中心だが、運転は好きだ。小さい時から「パイロット」になるのが夢だった。運転士になった。「空か地上かの違いだけで、どっちも運転士。夢がかないました」と言う。おおらかな性格だ。ONとOFFがはっきりしている。仕事中は一切笑わず、仕事に集中する。仕事が終わり仲間との飲み会になると、別人に変身する。テンションが上がり過ぎて止まらなくなる。が、翌日はまた仕事の顔に戻っている。

 生まれは盛岡の山奥。現在は大船渡暮らし。勉強嫌いで優柔不断と自己分析しているが、実際は真面目で頑張り屋だ。

 千葉の自慢は、「仕事(三鉄)も嫁も替えずに今まで頑張ってきたことです」と言う。さらなるプロフェッショナルを目指し、今日もてきぱきと仕事をこなす。

 

三鉄ぽっぽ屋「花形運転士シリーズ」ニヒル風 鈴木 浩(ゆたか) 48歳

20150203

実は、通学女子のNO1人気男。(だった) 笑わない。ニヒル風である。専任運転士というより、運転指令と半々の業務で、リーダーシップ抜群の男気、菊池運転士のような女っぽいところがない男の中の男なのである。責任感が強く、地元消防団の専任班長も務めている。

男気エピソードも多い。大船渡高校2年の時に、野球部が初の甲子園。なんとベスト4まで進んだ。鈴木も応援に駆け付けたかったが、応援歌の練習をさぼり、唄えなかったので行けなかった。野球部の友人から「甲子園の砂」をもらった。男気から、その場でふたを開けたら逆さまになってしまい、砂が流れ落ち、その場で消滅した。砂は儚いと知った。

家は、大船渡市の中ではもっとも山奥に位置する幽谷の中。日頃市町。人はあまり住んでいない。水道は自然水を使っている。蛇口をひねったら、水と一緒にサンショウウオが出てきた。嫁さんが気絶した。男気を出して嫁を抱きかかえた。熊の出没は日常的で当たり前。熊と目が合い、男気を出してすごみあった。負けた。

男気は日常生活でも発揮されている。勝負事が好きだ。パチンコ、麻雀、将棋、ゴルフ。常に賭けている。遊び人ではなく、勝負師なのだ。金は溜まらない。

昭和60年4月に三鉄へ入社した。駅業務、車掌、運転士、指令と順調に進んできた。震災では、三鉄の復旧と消防団復旧業務と連日連夜働いてきた。頭脳より体力で貢献するタイプのため、肉体労働は苦ではない。震災後、もう一つの第三セクター岩手銀河鉄道に平成24年に出向。翌平成25年に三鉄へ復帰。

三鉄の地域貢献事業の一つに「駅‐1グルメ」がある。その取材は鈴木が大船渡エリアを担う。足を棒にしながら気仙沼、陸前高田、大船渡の飲食店を探し回る。あきらめないのが身上だ。鈴木が発掘した被災店舗で生き返った店も多い。男気なのだ。

男気家族は、妻一人。子供二人。母一人。結婚16年。妻は熊に立ち向かえるようになった。妻は男気を操っている。