望月正彦さんは、三鉄震災復旧の立役者として八面六臂の大活躍で、東西南北、日本中を講演して歩き、三鉄をPRしてきました。大震災の少し前に期せずして着任し、それが人生の大きな節目となりました。釣りや山菜、キノコ採りと大好きなアウトドアをたっぷり満喫するつもりの社長就任でしたが、あの3・11で180度の方向転換となりました。その隣にいるのは、中村一郎さん。3・11の時は岩手県沿岸広域振興局長として陣頭指揮にあたってきました。たまたま釜石市内のホテルでセミナーを開催している最中に被災し、どうにか職場に戻った経験をしています。二人はそれぞれの立場で3・11の現場にいたのです。
中村一郎さんは、その後県庁に戻り、復興局長として震災復興の指揮を執ってきました。
6月24日、三陸鉄道の株主総会が開かれました。その席で望月正彦前社長から中村一郎さんに三陸鉄道の社長が引き継がれました。とてもすごい人事なのです。新社長となった中村一郎さんは、とっても温厚で人徳があり、県職員からも慕われてきました。望月正彦さんが、三鉄復興の第一弾を担ってきたとするなら、中村一郎さんは、次のステージ、JR山田線の一部移管を目指した第二弾の指揮を執ることになります。第二弾は、三鉄にとってはいばらの道です。少子高齢化が進み、大事な定期券利用の高校生が激減していきます。また163キロと、日本一長いローカル線となり、その運営維持費は膨大な金額となります。難題だらけの三鉄社長の就任は、おそらくめまいがするほど苦労覚悟の大事業かもしれません。それでも、「明るく、前向きに三陸沿岸、そして岩手県の希望の鉄道になりましょう」と社員の皆さんへ抱負を述べました。未曽有の大災害や想像を絶する危機的状況の中において、私たちが学んだことは、「強いリーダーの存在が成否を分ける」、ことでした。望月正彦さんから中村一郎さんへ、ともに強く優しいリーダーです。沿岸各地も復興道半ばですが、前に向かって進む重機関車のごとく、夢を持って進んでいく三陸鉄道の姿が浮かんできます。