連日多くのお客さまであふれている三陸鉄道。宮古駅と久慈駅はその中心にあります。待合室で待っているお客さまは宮古駅のトイレを頻繁に利用します。そのトイレを一生懸命、ピカピカに磨いているのは運転士の小向君です。普通、鉄道会社の運転士は、花形と言われ、運転以外は一切しないと言われています。ところが三鉄の運転士は、車中での観光案内や、お年寄りの乗降車アテンド、車内清掃や切符の受け取り、清算要務と全てをこなします。さらには人手が足りないときは、線路上に覆いかぶさる樹木の伐採や、雪の時には除雪作業まで、とにかく働き続けます。
小向君に限らず、三鉄の運転士は皆親切で温かな対応をするので、乗客からの礼状なども運転士宛てに届いたりします。誰も見ていないトイレの中で、少しでもお客さまが気分良くなるようにと、適当な清掃ではなく、ピカピカになるまで頑張ります。この写真は本人が照れるので、後ろからこっそり写したものです。
大震災の最中に、トンネルに残された運転士。普代駅まで自分の判断で乗客を安全に運び、救出まで必死に頑張った運転士。運転明けで自宅に戻り、津波にのまれ、九死に一生を得てやっと助かった運転士が、指を切断しながらも復旧作業に従事したなど、数えるほどのエピソードが残っています。そんな彼らは、何事もなかったように、平然と黙々と仕事をしています。
やがて、もしかするとJR山田線の宮古と釜石間がつながれば、三鉄運転士のフィールドが三陸沿岸一帯に及んできます。給与も決して高くない中で、会社を愛する気持ちと郷土を愛する気持ちを抱いて頑張っている運転士に拍手を送ります。運転中は声を掛けることができませんが、皆さま、三鉄に乗車した折には、乗り降りの際にでも声を掛けてください。すてきな運転士たちです。
よろしくおねがいします。
2014.11.7盛岡タイムス掲載