何がすごいかといいますと、「煎り酒」という伝統調味料がすごいのです。江戸時代の花形調味料でしたが、東北には伝わってきませんでした。ではなぜ、三鉄が伝統調味料を開発したか、それには深~い訳があります。
ある日の土曜日、商品開発コーディネーター五日市さんと、三鉄の望月社長さんが仲間と一緒に釣りに行きました。カレイやアイナメなど入れ食いで大満足の一日でした。そうしたら望月社長が「カレイやアイナメは白身だよね。刺し身に合うしょうゆって何を使っているの」と五日市さんに聞きました。「それなら以前試したことのある煎り酒っていうのがありますよ」と答えましたら、望月社長、目がらんらんと輝くではありませんか。「そ、その煎り酒って、お酒?」「いえ、調味料ですよ。江戸時代には主流だったようですよ」と。そこから開発が進みました。
その世界では一番の食いしん坊で県内トップクラスの和食の達人、盛岡の直利庵の松井親方の元へ走りました。10日後、こん身の煎り酒見本が出来上がりました。「もう、こんなおいしい調味料、離せないわ」と裕子さん。白身魚の刺し身にはこれ以上ない風味を醸し出す「煎り酒」ができたのです。そこからは浅沼醤油店に依頼し、何度も何度も松井親方のレシピを元に試作を繰り返し、ようやく4月に完成しました。
釣りに行ってから1年。三陸の魚がとびきりおいしくなる「煎り酒」です。釜石の浜千鳥の日本酒と、普代村の昆布に二戸の梅干しを加えて煮込みます。半量まで煮詰めると、琥珀(こはく)色の液体が現れます。これこそ「煎り酒」。
難点は「高価」なことです。800円もします。でも価値がありますよ。一度はお試しください。