三陸マタギ集団の熊肉祭り

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友人から電話がありました。「今晩、マタギ仲間と熊肉焼いて食うから来ないか」と。三陸沿岸で有害獣の駆除をオフィシャルに依頼されているマタギ集団の友人からです。早速晩餐(ばんさん)会に駆け付けました。

なんと、その日に処理された熊のあらゆる部位が解体され、見るからにうまそうな肉の山がありました。「熊の背肉ロース」「レバー」「タン」「腎臓」「脂身」だそうです。熊のタンなんか見たことも聞いたこともなく、まして熊の生レバーなんて目が点になりました。

マタギの仲間、ご高齢な方々10人ほどが集結し、早速焼肉が始まりました。三陸マタギにも序列があり、弱そうでほんとに鉄砲撃つの、と見える方がサブリーダーで、熊のようにごついご仁が部下でした。リーダーの中澤さん、温厚ですが知識、経験が深く、有害獣駆除の会長で、「今年は熊が多く、駆除の依頼が殺到している」と困惑顔でした。山菜でも川魚でも獣でも、必要な分しかとらない山男たちなのです。

「て、」と花子とアンの甲州弁で叫んだのは、レバーのあまりのおいしさに驚がくしたからです。熊の脂身が必需で、これがないと始まらないと長老がおっしゃっておりました。マタギの仲間は、あの時は、あのさばき方は、など話が尽きませんが、私は黙々と、ロース、レバー、タン、腎臓と休む暇なく焼いては食べ、食べてはビールの繰り返しでありました。「山の神様に感謝し、すべてを食べ尽くすのが礼儀」と中澤さん。言葉に重みがあります。もちろんわたくしも「感謝」でいっぱいなのですが、とうとう、おなかがいっぱいになってしまいました。

新鮮そのもの、昔食べた熊汁が臭かったので、そのイメージが残っていましたが、処理の技術がすごく、臭みなど一切なく、塩とこしょうだけで十分満足する味になっています。なぜか体の芯のほうからエネルギーが満ちあふれてきました。が、大満足でこの日は午後9時に就寝となった次第であります。翌朝、ガオーと叫んで目が覚めました。

2014.8.19 盛岡タイムス掲載