カテゴリー別アーカイブ: 潮風宅配便

「駅─1グルメ」足と舌で稼ぎ第6号

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三陸鉄道やJR東日本、岩手県職員などの有志が集まり、ボランティアで取材活動しているパンフレット制作チームがあります。「駅─1」とは「えきいち」と読み、その駅の近くでお薦めできるおいしい料理とお店を紹介するものです。B-1のように出掛けて戦ったりはしません。あくまでその店に行かないと食べられないという設定です。震災で焼失し、いまだ動いていないJR山田線や大船渡線の駅も含まれています。事務局は三陸鉄道にあります。

第1号は、2011年3月初旬発行のため、掲載した店舗の大半が津波で消失し、幻のパンフレットとなってしまいました。その後、年2回のペースで編集し、今回で第6号となりました。

北は八戸から南は気仙沼まで28店舗の料理と、地元のスイーツ8種類を紹介しています。

第6号は、鍋・スープ特集です。伝統的な「はっと」や「ひっつみ」、魚介類を生かした「ブイヤベース」、ワカメを加えた「スープカレー」、珍しい「スープハンバーグ」など、汁ものをテーマにした料理が並びます。どれも編集隊員が自腹で食べて見つけてきた逸品ぞろいです。三陸の食材は、魚介類や短角牛、冬野菜など冬においしさを増す食材がわんさか出てきます。被災して仮設店舗のままの普代村「魚定」は、漁師だからこその、これでもかと豪華な食材をぶちこんだ「太田名部漁港のおおたなべ」をエントリーしました。

このパンフレットは観光客の皆さんばかりではなく、遠方から働きに出てきている工事関係の方々のガイドブックとしても重宝されています。ガイドブックは無料です。三鉄やJRの各駅などに置いてあります。「こたつ列車」に乗って冬のぶらり旅。駅―1ガイドブックでおいしいお店を訪ねてください。どうしても欲しい方は、三鉄本社の総務部までお問い合わせください。

2014.11.30盛岡タイムス掲載

サンマが極限の美味に昇格

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私の元気のもとと言えば大げさですが、盛岡へ戻ると必ず食べたくなるのが、中ノ橋にある「直利庵」のそばです。純白な細麺と、上品な返しのマッチングは、二十数年来、変わらぬ味です。

先日、友人たちといつもの昼食を食べに行きました。決まって「もりそば」と「半親子丼」を注文します。そこに松井親方が「草野さん、ちょっと試食してみて」と運ばれてきたのが「サンマ丼」でした。見た目も良く、炊き立てのご飯の上には、うな丼のように甘ダレがかかっていました。「ま、サンマだし、珍しいわけでもないかな」と心で思いながら、まずは一口、香ばしい香りのサンマとご飯を口に運びました。

「じぇじぇじぇじぇじぇ」(決して古いセリフではありません。三鉄ではまだ公用語です)。目玉が飛び出してしまいました。単なる香ばしさだけではなく、爽やかなレモンの酸味と、白ごまの焦げた香り、ふっくらとしたサンマの身が口の中でコンサートです。ただただ、ぼうぜん自失。うっとりを通し越して、もはや涙目になっていました。

今年は品質も良く、何度も何十匹も食べてきたサンマ。しかし、松井親方の腕は、その当たり前の感覚をはるかに超えていました。丁寧な下処理は、小骨さえなく、皮はパリ、身はふっくら、タレはレモン汁と甘めのしょうゆ味。もはや、食い気は止められず、一気にかっこんでしまいました。完敗です。いや乾杯です。

2日ほどしてもう一度行きました。今度は迷わず「もりそば」と「サンマ丼」を注文しました。大満足で帰ろうとしましたら、親方が「用意しておいたので食べてください」と、何十枚ものサンマの切り身と、タレ、はしかみ、レモン、いりごまをパックに詰めて渡してくれました。なんといういい人なのでしょうか。こういう場合は、まったく遠慮はせず、気持ち良くいただくのが私の流儀なもので、ヨダレを我慢しながら、お礼を言って店を後にしました。その日の夜、レシピ通りに作った「サンマ飯」がこの写真です。微妙な焦げ目も再現しました。岩手の新米が湯気を上げ、部屋中に「サンマ丼」の香りが充満しました。ごちそうさまでした。

2014.11.21盛岡タイムス掲載

沖縄から希少種石垣島レモン 

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沖縄県石垣島は、岩手県ととても深い関わりのあるところです。岩手県が1993年に大冷害に見舞われたときに、二毛作の温暖な環境を生かし本県の種もみを石垣島が増殖してくれました。その後、交流が進み、「かけはし交流」となって、石垣島マラソン・北上マラソンとして民間交流が続いています。

その石垣島で、脱サラをしてジャングルを開墾し、奥さまと一緒に石垣島レモンの栽培に取り組んできたのが須川さんご夫婦です。マイヤーレモンという希少種にほれ込み、大自然の中でそのまま育てています。農薬など一切使わない農法です。岩手県の商品開発コーディネーター五日市知香さんが、たびたび沖縄で仕事をし、その最中に知り合った須川さんとのご縁で実現し、全国初の店頭販売となりました。

多分この号が掲載される頃は、すっかり売り切れていると思います。すみません。20㌔が届き、1個1個丁寧にパッケージしてくれました。ポーズを取っているのは「結いの市」のマドンナ佐々木香さんです。石垣島レモンのような爽やかな笑顔でレモンを掲げています。どちらがレモンか分からなくなってしまいます。味覚は、あの酸っぱい黄色いレモンとは全く異なり、太陽を肥料に育ってきたためか、甘酸っぱく、とても清涼感あふれる、すがすがしい味覚なのです。

私は、石垣島レモンを四つに割り、焼酎の水割りに、たっぷりと搾りました。一口飲んだ瞬間、私の体は石垣島へ飛んでいってしまいました。なんという極上の味、まさに桃源郷の味になってしまったのです。気が付いたら、寒い宮古の部屋におりました。仕方がないのでもう一杯。またまた石垣島へ直行です。沖縄に行かなくても、石垣島レモンを注いだ焼酎水割りで、すっかり石垣島の農園にいるような錯覚になるおまけ付きなのです。次は来年の収穫のあと岩手県へ送ってくれるそうです。楽しみですね。

2014.11.14盛岡タイムス掲載

素晴らしい三鉄運転士

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連日多くのお客さまであふれている三陸鉄道。宮古駅と久慈駅はその中心にあります。待合室で待っているお客さまは宮古駅のトイレを頻繁に利用します。そのトイレを一生懸命、ピカピカに磨いているのは運転士の小向君です。普通、鉄道会社の運転士は、花形と言われ、運転以外は一切しないと言われています。ところが三鉄の運転士は、車中での観光案内や、お年寄りの乗降車アテンド、車内清掃や切符の受け取り、清算要務と全てをこなします。さらには人手が足りないときは、線路上に覆いかぶさる樹木の伐採や、雪の時には除雪作業まで、とにかく働き続けます。

小向君に限らず、三鉄の運転士は皆親切で温かな対応をするので、乗客からの礼状なども運転士宛てに届いたりします。誰も見ていないトイレの中で、少しでもお客さまが気分良くなるようにと、適当な清掃ではなく、ピカピカになるまで頑張ります。この写真は本人が照れるので、後ろからこっそり写したものです。

大震災の最中に、トンネルに残された運転士。普代駅まで自分の判断で乗客を安全に運び、救出まで必死に頑張った運転士。運転明けで自宅に戻り、津波にのまれ、九死に一生を得てやっと助かった運転士が、指を切断しながらも復旧作業に従事したなど、数えるほどのエピソードが残っています。そんな彼らは、何事もなかったように、平然と黙々と仕事をしています。

やがて、もしかするとJR山田線の宮古と釜石間がつながれば、三鉄運転士のフィールドが三陸沿岸一帯に及んできます。給与も決して高くない中で、会社を愛する気持ちと郷土を愛する気持ちを抱いて頑張っている運転士に拍手を送ります。運転中は声を掛けることができませんが、皆さま、三鉄に乗車した折には、乗り降りの際にでも声を掛けてください。すてきな運転士たちです。

よろしくおねがいします。

2014.11.7盛岡タイムス掲載

中国で活躍の会員3年ぶり

 

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イオンスーパーセンターの元社長の奥野さんが三鉄にやってきました。盛岡で3年間生活をし、その後、中国へ転勤となりました。永旺投資有限公司・常務副総裁という肩書です。永旺というのは、イオンのことです。中国全土を束ねる広州の本社で活躍しています。盛岡にいた時に、三陸鉄道を勝手に応援する会の会員として交友を広めてきました。

3年ぶりの里帰りのようなものですが、今回の目的は、イオン香港のお店で三陸鉄道を紹介する「東北フェア」のご依頼でした。もちろん望月社長は二つ返事で「何でも協力します」と引き受けました。奥野さんは、多くの香港の人たちに三鉄へ足を運んでもらうようPRしたいとのことでした。

三鉄コーナーを中心に、三陸ワカメや日本酒、岩手の三大麺、新米なども販売します。岩手県の大きなPRになるように頑張りますと大きな体を丸めて説明してくれました。中国では、日本排斥運動の渦中を体験し、今は香港の学生運動に遭遇しています。心なしか、中国人の顔になってきたような。さまざまな危機も、きっとこの温和なスマイルがあれば、中国の方も一気に和んでしまうのではと勝手に想像しています。

国道106号の秋色のすてきな風景の中を車で移動してきました。「日本は本当に素晴らしいと中国で生活していると、つくづく良さが分かります。特に岩手は本当に素晴らしいところ」と感慨深く話してくれました。

なぜか、盛岡で勤務された方は、みなさん大出世をしています。一緒に来たイオン香港の奥嶋さんは、大の鉄ちゃん。望月社長のサインが欲しいと「三鉄情熱復活物語」を持参。頂いたサイン本を震えながら鞄にしまいました。11月12日から香港で大々的に開催される「東北観光物産展」。三鉄が海外でも人気が高まりますよう香港イオンの奥嶋さん、よろしくおねがいします。

2014.10.31盛岡タイムス掲載